さなぶりの語源


さなぶりやの小麦餅のことを「さなぶり餅」といいます。
一般では半夏生餅(はんげしょうもち)、またはそのまま小麦餅といいます。

「さなぶり」の「さ」は田の神様。
「なぶり」は、昇りを表現した言葉といわれています。
田植えを終えた農家の人たちが無事農作業を終えたことを、
田の神様に感謝しお供え物をして共に食し休息をした日のことをいいます。

一方、半夏生というのは、夏至から数えて11日目をいいますが、
(1年365日の丁度半分)田植えはこの日までに終えないと、
それ以降は田圃にいくら水が豊富にあっても稲作の収穫は半分になると言われ、 半夏半作・半夏半農という言葉もあります。

ちなみに丁度この頃は、半夏生の花が咲きます。
三白草ともいわれるこの花は、上から3枚目までの緑の葉の半分が白く可愛い花で 水無月、葉月の季節を思い浮かばせるのにふさわしい花です。
半夏生餅は季節を思い出させ、そう名付けられたのでしょう。

小麦餅は、昔から大和の国・南河内・北和歌山地方で食されていたようです。 (三つの地域では共に半夏生の日に搗く慣わしが現存しています)
大和は素麺で知られていますように、昔から小麦の文化がありました。 大和の農家には小麦が身近にあり、餅を搗く時に小麦を混ぜて搗き込み、 きな粉をつけていただくものです。
大和の人にとっては誰が食べても懐かしく郷愁をそそる味です。

小麦を混ぜることで歯切れが良く、硬くなりにくく軟らかさを保ちます。
餅米に小麦、きな粉(大豆粉)の栄養のバランスは まことに絶妙の取り合わせとなってきます。
餅米だけでは不足がちなビタミンB1・タンパク質、 植物性の脂肪酸・植物繊維・カリウムや鉄が加わります。
先人が特に栄養のことを考えた訳でもないと思いますが
自然に備わった美味しさが受け継がれていったものと思われます。
お供えのお下がりは、硬くなりにくく軟らかで美味しく胸焼けせず体の調子が良く、 そして家にある小麦も食べてしまうという 一石二鳥も三鳥ものお餅だったのではないでしょうか。

どうぞ先人達の知恵で作られたこのさなぶり餅、大和の誇る名物をご賞味ください。




7月頃に咲く半夏生の花(別名 三白草)